2016年頃の悩み
症例報告を書いたことがないことに気づく
働き始めて8年が経とうとしていたある日、後輩の論文指導をすることになりました。そんなとき、大事なことに気づきました。
「そういえば症例報告(ケースレポート)を今まで書いたことがない。そもそも指導なんてできるのか?」
そんなありえない状況をなんとか独学で乗り切り、後輩の努力+スピード対応の結果、無事学術雑誌に症例報告が掲載された方法をお話します。独学で頼りになった本もご紹介します。
この記事を読むとここまでできます
論文にしやすい(書きやすい)症例の条件がわかります。これが決まればあとは書くだけです。スタートラインに立てます。
症例の条件【出だしでつまずくと後が大変】
負け戦には参加するな!
どんな症例が論文にしやすいでしょうか?
ぱっと思いつくのは珍しい症例ですが、珍しいだけの症例で書き始めてしまうと結構危険です。結局のところ論文で難しい(筆が止まる)のは考察を書くことだと思うのですが、珍し症例で書き始めて、いざ考察を書こうとした時に筆が止まります。珍しいということ以外書くことがあまりないからです。そのままお蔵入りしてしまったらそれまで準備してきた時間が水の泡です・・・。珍しいだけの症例は負け戦となるでしょう。
自分がこれまで症例報告を論文化できなかった理由もここにあったのではないかと思います。
学会の症例報告でもよく目にしますが珍し症例って言われてもそもそも経験がないから「ふーん、そうなんだ」で終わることが多いですよね。実臨床に役立つことがあまりないように思います。
勝ち戦とは?
では勝ち戦とはなんでしょう?
考察を書ききってしまえばあとはどうにでもなります。考察を書ききることを目標にしましょう。それを前提に勝ち戦=書ける症例を考察してみます。
書ける症例とは、読者に伝えたいポイントが2つある症例です。
先に述べた珍しいだけの症例では1つなので書ききるのが難しい。2つ揃っているということが必要です。2つもあれば考察で1〜2段落は稼げますから楽勝だと思います。
勝ち戦とは「伝えたいポイントが2つ揃っている症例」となるわけです。
条件に見合う症例に出会うには?
書ける症例がわかりました。でも本当にそんな症例と出会うことはできるのでしょうか?
常にアンテナを張っておくことは大切です。アンテナとは「伝えたいポイント2個ないかな」です。
偶然そんな症例と出会い、治療も上手くいきトントン拍子で論文化ということもあるでしょう。しかし滅多に遭遇しないことの方が多いかもしれません。そんなときは伝えたいポイント2個を見つけにいく必要があると考えます。待っているのではなく見つけにいくのです。
- ①少し珍しい疾患、発生部位が珍しい+②治療法を工夫して上手くいった
- ①発生頻度が少ない疾患+②この検査法が有効であった
- ①珍しい経過をたどった+②それに対してこんな検査・治療をおこない上手くいった
上のどれかに当てはまれば(①、②はそれぞれ組み合わせてもよいでしょう)、もう論文はできたも同然です。
せんせい、あのね
ご存知の方が多いと思います。小学生のときに作文書きましたよね?
上の条件をこの「せんせい、あのね」に当てはめて文章にしてみましょう。ここまでできればその症例は論文にすることができます。「せんせい、あのね」から書き始めるとするすらと文章にしやすいようです。文章を書く相手(ターゲット)を明確にしているからなんでしょうか?もちろん、ここでいう「せんせい」とは論文を確認してくれる指導医(一人で書くなら読者を想定してもよいでしょう)です。
せんせい、あのね 〇〇病が△△に発生したひとを診察したよ。△△に発生するのは少ないんだよ。□□のように治療するところを☓☓としたらすごくうまくいったよ。みんなにも知ってもらいたいな。
最後の、みんな(読者)にも知ってもらいたいな、というところが本当に大事です。論文を完成させるにはつまらない作業も伴うので、やらされている(論文書け!と言われて書くことが多いですよね)感が強いと萎えます。「この事象を読者に伝えたいんだ!」という強い意識が伴えば最後までいけます。萎えてもいけます。逆にこれがないと結構きついと思います。
その症例は せんせい、あのね でまとめられますか?
今回は以上になります。