舌痛症の原因と治療法|舌がヒリヒリ痛む症状を専門医が詳しく解説

舌がヒリヒリと痛む、焼けるような感覚がする、そんな症状に お悩みではありませんか?このような症状は「舌痛症」と呼ばれる 病気の可能性があります。

舌痛症は、見た目には異常がないのに舌に痛みを感じる病気です。 多くの方が「原因不明の痛み」として悩まれていますが、 適切な診断と治療により改善が期待できます。

今回は、歯科口腔外科専門医として、舌痛症について わかりやすく詳しく解説いたします。舌の痛みでお困りの方は ぜひ最後までお読みください。

【舌痛症とは?症状と特徴を専門医が解説】

舌痛症(ぜっつうしょう)とは、舌に見た目の異常がないにも かかわらず、慢性的な痛みや不快感を感じる病気です。 英語では「Burning Mouth Syndrome」と呼ばれています。

舌痛症の主な症状

舌痛症の症状は人それぞれ異なりますが、以下のような特徴が よく見られます。

痛みの種類

  • ヒリヒリとした焼けるような痛み
  • ピリピリとした電気が走るような感覚
  • じんじんとした持続的な痛み
  • 舌の表面がざらざらする感じ

症状の現れ方 舌痛症の痛みには特徴的なパターンがあります。朝起きたときは 症状が軽く、日中から夕方にかけて徐々に強くなる傾向があります。

また、食事中は痛みが和らぐことが多く、食後に再び症状が 現れることが特徴的です。これは舌痛症の重要な診断ポイントの 一つとなります。

痛みが現れる場所 舌痛症で最も多いのは、舌の先端や両側面の痛みです。 舌の中央部分や舌全体に痛みを感じる方もいらっしゃいます。

時には口の中の他の部分、例えば唇や歯茎、上あごなどにも 同様の症状が現れることがあります。

舌痛症になりやすい人の特徴

舌痛症は、特に中高年の女性に多く見られる病気です。 更年期前後の女性に発症することが多く、ホルモンバランスの 変化が関係していると考えられています。

ストレスを抱えやすい方や、几帳面で完璧主義的な性格の方にも 多く見られる傾向があります。また、他の病気の治療で薬を 服用している方にも起こりやすいとされています。

【舌痛症の原因|なぜ舌が痛くなるのか?】

舌痛症の原因は複雑で、多くの場合、複数の要因が組み合わさって 発症すると考えられています。主な原因を詳しく見ていきましょう。

身体的な原因

口腔内の問題

  • 入れ歯や詰め物の不適合による刺激
  • 歯ぎしりや食いしばりによる舌への圧迫
  • ドライマウス(口腔乾燥症)
  • 口腔カンジダ症などの感染症

全身の病気

  • 糖尿病
  • 甲状腺機能低下症
  • 貧血(特に鉄分不足)
  • ビタミンB群や亜鉛の不足
  • 自己免疫疾患

薬の副作用 血圧の薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬などの服用により、 口の中が乾燥し、舌痛症の症状が現れることがあります。

心理的・精神的な原因

現代社会では、ストレスが舌痛症の大きな原因の一つとなっています。

ストレス要因

  • 仕事や家庭での精神的負担
  • 人間関係の悩み
  • 経済的な不安
  • 健康への心配

ストレスは自律神経のバランスを崩し、唾液の分泌量を減らしたり、 痛みを感じやすくしたりします。また、うつ病や不安障害といった 精神的な病気が背景にある場合もあります。

ホルモンバランスの変化

女性の場合、女性ホルモンの変化が舌痛症に大きく関わっています。

更年期の影響 更年期になると女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少し、 口腔内の環境が変化します。これにより、舌の痛みや口の乾燥感が 現れやすくなります。

月経周期との関係 生理前や生理中に症状が悪化する方も多く、ホルモンバランスの 変動が症状に影響していることがわかります。

神経系の異常

舌痛症では、痛みを感じる神経系に何らかの異常が起こっていると 考えられています。本来なら痛みを感じないはずの刺激を痛みとして 感じてしまう状態です。

この現象は「神経障害性疼痛」と呼ばれ、舌痛症の重要な メカニズムの一つとして研究が進められています。

【舌痛症の治療法と対処法|専門医による治療アプローチ】

舌痛症の治療は、原因に応じて様々なアプローチを組み合わせて 行います。完治までに時間がかかることもありますが、 適切な治療により改善が期待できます。

原因に対する治療

口腔内環境の改善 まず、お口の中の問題を解決することから始めます。

  • 入れ歯や詰め物の調整
  • 歯ぎしり用のマウスピース作製
  • 口腔乾燥症の治療
  • 口腔カンジダ症の治療

全身疾患の治療 基礎疾患がある場合は、その治療を優先して行います。

  • 糖尿病の血糖コントロール
  • 甲状腺機能の正常化
  • 貧血の改善
  • ビタミンや亜鉛の補充

薬物療法

痛みを和らげる薬 舌痛症の痛みに効果的な薬がいくつかあります。

  • 神経障害性疼痛治療薬(プレガバリンなど)
  • 三環系抗うつ薬(低用量使用)
  • 抗けいれん薬
  • 局所麻酔薬の含有薬

これらの薬は、痛みを感じる神経の働きを調整し、 症状の改善を図ります。

口腔乾燥に対する治療

  • 人工唾液
  • 唾液分泌促進薬
  • 保湿ジェルや洗口液

心理的サポートとストレス管理

舌痛症の治療において、心理的なケアは非常に重要です。

カウンセリング 専門のカウンセラーや精神科医によるカウンセリングを受けることで、 ストレスの原因を特定し、対処法を学ぶことができます。

リラクゼーション法

  • 深呼吸法
  • 筋弛緩法
  • 瞑想やマインドフルネス
  • ヨガや太極拳

これらの方法により、心身のリラックスを図り、 症状の軽減を目指します。

生活習慣の改善

食生活の見直し 刺激の強い食べ物は症状を悪化させることがあります。

避けたい食品:

  • 辛い食べ物
  • 酸味の強い柑橘類
  • 熱い飲み物
  • アルコール
  • タバコ

推奨される食品:

  • 柔らかい食べ物
  • 冷たい飲み物
  • 乳製品
  • ビタミンB群を含む食品

口腔ケアの充実

  • 優しい歯磨き
  • アルコールフリーの洗口液使用
  • 舌ブラシでの舌清掃
  • 定期的な歯科検診

治療効果と予後

舌痛症の治療効果には個人差がありますが、適切な治療により 多くの患者さんで症状の改善が期待できます。

治療開始から効果が現れるまでに数週間から数か月かかることが 一般的です。症状が完全になくなる方もいれば、症状が軽減し 日常生活に支障がない程度まで改善する方もいらっしゃいます。

重要なのは、医師と連携しながら根気よく治療を続けることです。 自己判断で治療を中断せず、定期的に経過を観察しながら 治療方針を調整していくことが大切です。

まとめ

舌痛症は、見た目には異常がないのに舌に痛みを感じる病気です。 原因は多岐にわたり、身体的要因、心理的要因、ホルモンバランスの 変化などが複合的に関わっています。

症状でお困りの場合は、まず歯科口腔外科や口腔内科を受診し、 適切な診断を受けることが重要です。原因に応じた治療により、 多くの場合で症状の改善が期待できます。

一人で悩まず、専門医に相談して、快適な日常生活を 取り戻しましょう。舌痛症は治療可能な病気です。 希望を持って治療に取り組んでいただければと思います。

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